阿川佐和子が、父親である阿川弘之の、食に関する随筆を朗読するCDを聴きました。明らかに聴くのは今回が2度目なのに、この新鮮さはどういうことでしょう。
「食味風々録」という随筆で、その第1作は「米の味・カレーの味」というタイトルです。主食である米には、日本人の誰もが深い思い入れをもっています。にもかかわらず、かつて日本に「米飯食を禁ず」という校則をもった学校があったというのです。
それは、なんと札幌農学校でした。クラーク博士には、深い教育的配慮があったのでしょう。そこには但し書きがついています。「ライスカレーは、その限りに非ず。」ここから、又吉にも負けない、ライスカレーのうんちくが始まります。
阿川の知人に、ただ一人、米はしいて食べようとは思わない、という変人が登場します。それは、阿川が師と仰ぐ、小説の神様、志賀直哉です。志賀が、どうして米飯嫌いになったのか、推理はさらにさかのぼります。
志賀直哉が師と仰ぐ人は、なんと内村鑑三だというのです。内村鑑三の師は、いうまでもなくクラーク博士です。この推理、本当に、つながっているのでしょうか。
ウィキペディアを見て驚きました。志賀直哉は、若い頃、確かに内村鑑三に師事しており、志賀の小説の原点ともいうべき、父親との確執の原因となった足尾鉱毒事件は、内村の講演を聴いてはじめて知った、というのです。