石狩のワシ派、タカ派

札幌と石狩川流域の猛禽類の狩りと子育てを動画で記録します。

朝飯の匂い

スタインベックの「朝飯」を朗読で聞きました。安岡章太郎が訳したものを、草野大悟が朗読しています。小説と随筆の境目を突いた、印象深い小品です。

朝焼けが始まったばかりの、ひどく寒い早朝。旅人が、綿摘みをする季節労働者のキャンプの前を通りかかると、若い女が、大きなかまどの前で、手際よく朝食の支度をしています。旅人は立ち止まって、熱いかまどに手をかざします。女の胸には赤ん坊がくくりつけられていて、寒さに、頭までスッポリ被われているが、ちゅうちゅうと乳を吸う音がします。赤ん坊の存在は、少しも女の仕事の妨げになりません。

ジュウジュウ焼けるベーコンの音とその甘い匂い、そして、どこからともなく、焼きたてのパンの香ばしい香りが漂ってきます。そのとき、突然、天幕が開き、いかつい髭面の男が3人、現れます。水に濡れた無愛想な顔は旭日に輝き、一瞬、緊張が走ります。

朝飯はまだか、じゃあ一緒に食っていけ。年かさの男が言います。

ベーコンを頬張り、ベーコンの油を浸みこませた焼きたてのパンをタップリ食べ、コーヒーをお代わりした、その旨い朝食の記憶が、脳裏に焼き付いている、という話です。

昔、映画の前にいつも流れた、マールボローのCMを思い出します。綿摘み労働者とカウボーイの違いはありますが、焼きたてのパンとベーコン、湯気の立ったコーヒーの香りが、毎回、スクリーンから漂って来たものです。

日本人なら、さしずめ、炊き立てのご飯と味噌汁の香り、でしょうか。