石狩のワシ派、タカ派

札幌と石狩川流域の猛禽類の狩りと子育てを動画で記録します。

「フランス物語」はパリの「舞姫」

永井荷風の「墨東奇譚」と「断腸亭日乗」は、図書館から何回借りて聞いたか、思い出せないほどです。

先日、「フランス物語」の中の一篇で、発禁処分となった「放蕩」をラジルラジルの朗読で聴き、日本嫌いの永井荷風が、森鴎外とは気脈が通じた理由の一端を垣間見ることができました。

「放蕩」は、パリ駐在の若い下級外交官の生活を赤裸々に描いたものです。主人公の職業と年齢は違いますが、描かれている情景も主人公の人生哲学も、「墨東奇譚」とほとんど変わりありません。

森鴎外の「舞姫」は、ベルリンに留学した若き鴎外の自叙伝のような作品です。山県有朋の部下で生真面目な鴎外と、自由奔放で退廃的な荷風とでは、真逆に見えますが、留学時代の生活にはほとんど差がなかった、ということです。

日本に戻った鴎外は、大谷選手のような、まじめ一方の二刀流となりましたが、荷風は「フランス物語」の放蕩生活を、死ぬまで崩さなかった偉人であり、鴎外も一目置かざるを得なかった、ということでしょう。