暖くなりました。
それでも、夜は寒く、防寒着に身を包み、庭の椅子に腰かけて、ホット薩摩焼酎をすすっていると、遠田からカワズの声が聞こえてきます。田植えが終わりに近づいた今頃、昔は、すぐ近くで鳴く無数のカエルの声が、天を満たしたものです。
岩にしみ入る蝉の声と同じように、けたたましいカエルの声も、夜の眠りを妨げることはありませんでした。
椅子から立ち上がって、庭を歩き始めたとき、遠くからひと声、あの声が聞こえました。エゾセンニュウです。エゾ・ホトトギスともいわれる、エゾセンニュウの初鳴きです。本物のホトトギスに少しも引けを取らない、堂々としたエゾ・ホトトギスの声です。
実朝ではありませんが、ホトトギスの初音を聞くのは素晴らしい感動です。
実朝の歌です。
ほととぎす 必ず待つと 鳴けれども よなよな目をも 覚ましつるかな
山近く 家居しせれば ほととぎす 鳴く初声は われのみぞきく
私の歌です。
ねがわくは 山法師さく 夏しなん エゾセンニュウの 声を聴きつつ