宇野重吉の朗読で、中野重治の「梨の花」を聴いた印象です。宇野重吉の朗読は完璧で、自分で読むより何倍も鮮明な像を結びます。昭和54年、NHKラジオで放送された中野重治追悼番組の一部とのことです。
明治末年の福井県の田舎の生活を、少年の目を通して描いた、白黒のドキュメンタリー映画を見るようです。50年後に生まれ育ったのに、私の育った田舎の風景と大差ない、という感じが、しないでもありません。
毎朝、仏壇に3個の「おぼけさん」を供え、皆で正信偈(しょうしんげ)を唱和します。最後に、家長が、親鸞さんの和讃ではなく、「あなかしこ」で終わる蓮如さんの御文(おふみ)を朗読するところは、真宗王国の伝統でしょうか。大変興味深く感じました。
女たちは朝ごはんの支度に忙しく、ちょっと座って手を合わせると、すぐに台所へと戻ります。どこかの寺の風景と少しも変わりありません。