アビガンは、ずいぶん前に、インフルエンザの治療薬としてつくられた薬です。インフルエンザ ・ウイルスのように、遺伝子がDNAではなくRNAであるようなウイルスの、RNA合成を阻害する、「元から断つ」、発想でつくられた薬です。
しかし、残念ながら、妊婦が使用すると胎児に副作用が現れる可能性があったため、インフルエンザの治療薬としては、承認されませんでした。
アフリカで、エボラ出血熱という、致死率の極めて高い、ウイルス病が流行しました。病原体は、RNAウイルスです。生きるか死ぬかの状況では、胎児への副作用など、構ってはいられません。RNA合成を阻害し、元から断つ、アビガンの治療効果が試され、嬉しいことに、奏功が伝えられました。
薬は、もともと毒です。元気な人に効く薬も、万人に有効な薬も、ありません。良薬とは、本来、特別な理由で、体調不良になった人に、ピンポイントで効く、特殊な毒です。
アビガンが、今、武漢コロナウイルスに使われようとしています。生死の境をさまよう、武漢コロナウイルスの患者に、アビガンが有効であることを期待したいと思います。