「鎌倉殿」の最終回の一歩手前の昨夜は、坂東武者を奮い立たせる尼将軍がどんな演説をするか、ドキドキして待ちました。
大江広元は、安倍元総理のスピーチライター、谷口智彦氏のように、尼将軍の意向を体し、渾身の力を込めて一世一代のスピーチ原稿を書き始めます。
立錐の余地もなく、集まった御家人を前に、尼将軍は広元が清書した書面を広げ、長く歴史に残る、頼朝への恩を説き始めます。
しかし、三谷幸喜の脚本は、突然、尼将軍に原稿の朗読をやめさせます。
歴史の定説に反し、義時追討を命じる後鳥羽上皇の院宣を受け、みずからの首を差し出すことで鎌倉と坂東武者を守ろうと覚悟した、執権義時への忠誠を求めるのです。
歴史学者の定説がどうだろうと、鎌倉幕府の正史、吾妻鏡にどう書かれていようとも、真実は誰にもわかりません。
大河ドラマはかくあるべしという理想的などんでん返しであり、天才的な劇作家の解釈だと思いました。
これからの政治家には、ウクライナのゼレンスキー大統領やアメリカのレーガン大統領のように、セリフを完全に覚え、適切に表現できる、”役者”が理想だと思います。もちろん、演説の中身が優れていなければならないことは当然ですが。
三谷氏には、体力気力が衰える前に、「足利尊氏」で、もう一度トライされることを熱望します。