真剣勝負が続き、しばらく見られなかった大相撲の悪習、大関互助会が、今場所、残念ながら復活しました。
貴景勝のカド番脱出を助ける、大関互助会が、久し振りに発動したのです。
横綱、大関戦の前に、何としても8勝させようとする、露骨な互助会相撲が続きました。
前半戦の相撲を見て、貴景勝が勝ち越せると考えた大相撲ファンはいなかったと思います。
このまま行くと、来場所は横綱一人、大関一人、そして次の場所は、大関がゼロとなってしまう。
不甲斐ない正代の相撲を見るにつけ、大相撲関係者の間に、かつて経験しこともない悪夢と危機感が広がったことでしょう。
見過ごすことのできない、今場所最大の汚点は、新横綱の照ノ富士が、勝負が決まったあと、高安を土俵下に突き落とし、休場に至る大怪我をさせたことです。
勝負が決まり、力を抜いた相手を、崖下に思い切り突き落としたのです。
ボクシングで言えば、倒れた相手を殴りつけたのです。
あのときほど、観客のいない土俵下が、岩盤のように硬く見えたことはありません。
勿論、観客がいれば、高安は助かり、観客は圧死していたでしょう。
しかし、これからの角界を背負う期待の新横綱を、誰も非難しませんでした。
貴景勝を相手にした、無気力な互助会相撲を見た直後、高安の執拗な相撲に、負ける瀬戸際まで追い詰められた照ノ富士は、勝った瞬間、我を忘れて復讐したのだと思います。