永井荷風は「墨東奇譚」の作家として知られているが、「墨東奇譚」をはじめとする一連の風俗小説を読んでも(聴いても)、永井荷風が文化勲章に値する、日本を代表する文豪とは思えませんでした。
実は、もっと不思議だったのは、あの文豪、森鴎外が永井を高く評価し、あの文豪、谷崎潤一郎が荷風を深く尊敬していたことです。
森鴎外も谷崎潤一郎も、「墨東奇譚」をはじめとする一連の風俗小説をもって、永井荷風を高く評価したのではないと思います。だいいち、鴎外は「墨東奇譚」を読んでいません。
最近、永井荷風の奥深い魅力に、ようやく気付きました。
それは、荷風の初期の作品、「あめりか物語」、「ふらんす物語」、そして、その日本版である「日和下駄(ひよりげた)」の朗読を聴けたお陰です。
「あめりか物語」を聴いて、最初に感動したのは「旧恨」です。この物語には、オペラに関する荷風の深い造詣がにじみ出ています。
https://www.youtube.com/watch?v=bmYMWWhxYFQ
「一月一日」には、米飯、日本酒、日本食を蛇蝎のごとく嫌う、日本人駐在員が出てきますが、その理由を知ると涙が出るとともに、荷風の意外な一面を知ることができます。
https://www.youtube.com/watch?v=db-moMqobmM&t=28s
「日和下駄(ひよりげた)」は、こちらの方が聴きやすいかも知れません。
https://www.youtube.com/watch?v=TKOS-BxXxX8
両文豪とも、荷風の初期の作品に、これまでの日本文学にはない、きわめて斬新な魅力を発見したことは間違いありません。