ゾウアザラシやオットセイの一夫多妻制と異なり、チュウヒの一夫多妻制は、どう見ても非生産的です。
なぜなら、複数の雌と産まれてくる多数の雛に、新鮮な獲物を休みなく運ぶのは、すべて雄の仕事だからです。
種付けをするだけで、子育てはすべて雌にまかせる、ハーレムの主とは、わけが違います。
案の定、チュウヒの子育ては、中々成功しないようです。
しかし、その昔、豊あし原のなかつくに(日本)のチュウヒは、カラスやトビよりも、ずっと繁栄していたろうと思われます。
古代の日本人が、まだ食べられる生ごみを大量投棄することは、なかったでしょうから。
そして、その頃のチュウヒは、基本的に、一夫一婦制だったろうと思われます。
その理由は、
1.チュウヒの雌は、5個以上も産卵する。
2.雌と5羽の雛に十分な餌を運ぶには、1個の巣に専念するのが合理的。
3.健全な生態系では、雌雄がほぼ同数育つ。
では、現在、絶滅に瀕しているチュウヒが、なぜ非生産的な一夫多妻制を採用するのか。
その訳は、以下の仮説です。
1.現在の環境では、チュウヒは5羽の雛を育てられず、兄弟姉妹の生存競争は極めて激しい。
2.兄弟姉妹の生存競争では、体の大きい、雌の生存確率が高まる。
3.その結果、雌の成鳥の数とくらべて、雄の成鳥が圧倒的に不足する。
4.雄不足を解消するため、一夫多妻制が採用される。
5.一夫多妻制により、餌不足はさらに深刻化し、雄雛の生存率はさらに低下する。
生息環境の悪化が続く限り、チュウヒの雄不足は深刻化し、非生産的な一夫多妻制はさらに広まる、というのが私の仮説です。
加えて、重労働のため、雄は、雌よりも寿命が短いかも知れません。
ハイイロチュウヒや大陸型チュウヒの雄が、雌と比較して、少なく感じられるのは、正しい感覚だと思います。