昨夜、水谷八重子の朗読で「滝の白糸」を聴きました。
年をとったなあ、と感じるのは、水谷八重子という名前で思い浮かぶ顔が、実は、この人ではなく、その母親の顔、ということです。
若い頃はたいそう美人だったろうなあ、と思わせる白塗りの舞台顔で、「あなたが二十歳(はたち)、私が十九のころよ」とか「わかれる、きれるは芸者の時にいうことよ」という姿が、思い浮かぶのです。「滝の白糸」は、てっきり、このセリフの出てくる話かと、誤解していました。
泉鏡花の小説は、「高野聖」にしても、この「滝の白糸」にしても、写楽や北斎の錦絵を見るような、鮮やかな場面の連続で、まさに劇画のようです。こういう素晴らしい小説を、自分で読むのではなく、上手な朗読で、もっと聴きたいものです。