驚きました。
霰(あられ)の混じったにわか雨が、車の屋根と巣を守る春恵の頭上に降り注いだ直後のことです。
まだ嘴の先の黒い若ワシが、突然、モエレの巣に侵入したのです。
2年前、三角関係のすえに、孵化したばかりの雛が、若い雌に殺された、防風林の悪夢がよみがえりました。
しかし、春恵はきわめて冷静で、16分間のにらみ合いの間、少しも動じませんでした。
若い侵入者が飛び去り、春恵が天に向かって叫んだ時、巣のある木には、雄の一二郎が戻っていました。
立ち上がった春恵は、卵の位置をずらし、体位を変えますが、給餌動作は行わず、今日も、どうやら孵化はなかったようです。
一二郎は、シフト・チェンジをせず、ふたたび狩りに戻りました。